トマト祭りの後仕舞いもようやく終わり、久しぶりにPC内に溜まったファイルや写真を整理していると、懐かしい写真を見つけた。
『渋谷の農家』でも少しだけ書いた、立ち枯れしたオクラの写真だ。
「美しいものほど美味しいと聞いて、以前、千葉の農家さんの畑で見た、立ち枯れしたオクラを思い出した。
畑を案内してもらっていたのだが、そこで見つけた一本のオクラの前で僕は動けなくなった。それこそ、桑原さんが話していた「種の持つ力を最大限に出し切り、生命を全うさせた」姿がそこにあった。大きく大きく成長した実は、成長の臨界点を超えて、爆発でもしたかのようにビリビリに裂けていた。その姿に胸を打たれた。いや、胸をえぐられた。圧倒的に美しかった。」
『渋谷の農家』内収録インタビュー/自然栽培という生き方
「美味しいものは美しい。美しいものほど美味しい」蒜山耕藝編より
実は、僕は、このオクラをいただくと、スタジオに持ち込み、知己のカメラマンである鈴木奈美さんにお願いして撮影をしてもらっていたのだった。それが、この写真だ。
アートという言葉には、芸術という意味と技術というふたつの意味がある。
このオクラは、生まれて、死んで、そして、また生まれるという生命の循環を全うさせたのだから、自らの種をつなぐという生きる技術を果たし、同時に、その姿を見つけた僕に圧倒的な美をもたらしてくれた。
THIS IS ART。
僕は、こんなにも美しく朽ち果てられるわけがない。
かなわない。かなうはずがない。
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