フードロスキッチンを終えて

先週の土曜日に開催した『フードロスキッチンへようこそ vol.1 一夜限りのご馳走サンドイッチの夕べ』にご来店いただいたみなさま、改めまして、ご来店ありがとうございました!

最初、「フードロスをテーマにイベントを考えて欲しい」と渋谷区さんにお話をいただいた時は、まず、断ろうと思った。なぜか。答えは簡単。フードロスをテーマにしたイベントなんてつまらないものしか作れないだろうと思ったからだ。フードロスが社会課題であることは分かっている。だから、食べ残しはしない。食べきれない量は作らない。そもそも、必要な量しか買わない。それくらいのことは、大体誰もが分かることだし、実践していることだろう。僕も同じだ。だから、例えば、「渋谷区では毎日2トンの食品ロスが出るんです」と言われても、だったら、イベントなんかにお金を使わないで、ロスが出ない仕組み作りに励むべきだろうとも思った。

だが、その時、ふと畑のことが頭に浮かんだ。例えば、今の時期なら、大根なんかの根菜。割れが出ちゃったものは当然出荷できない。だから、僕はそれを食べる。当然、味は変わらないから美味い。

「あ、そうだ!畑で出るロスをなんとか救いたい!」そう思った時に、パッと頭に浮かんだのが、今回、食材の提供を全面的に協力していただいたプラネット・テーブルの菊池さんの顔だった。全国4500人ものこだわり農家とのネットワークを持つ菊池さんだったら、美味しいのに出荷できない野菜たちを知ってるはずだ。問い合わせると「ありますよ!」と菊池さんは即答。ビンゴ!

そこで、まず、イベント名にフードロス食材から美味しいご飯を作る場所という意味で、フードロスキッチンという言葉が浮かんだ。この言葉が浮かんでから、美味しいロス食材をサンドイッチでいただくというコンセプトや代官山の『Bird』さんへお願いできるようになるまではあっという間だった。しかも、「フードロスという言葉がついたイベントはなかなか人が集まらないよ」という知人の心配をよそに、まず、Facebookのイベントページを作ってみた。すると、見る間に拡散されていき、3日間で50名の定員が満員となった。しかも、僕自身の知り合いは10人もいない。つまりは、純粋にイベントに興味を持ってくださった方がそれだけいるということに本当にビックリした。

その原因を自分なりに分析してみると、どう考えても「イベントページのBirdのサンドイッチの写真が美味しそうだったからに違いない」という結論に達した。つまりは、お腹すかせて、美味しいサンドイッチをたらふく食べに来る人が50人もいるということだ。と、ここで、俄然気合いが入ったのが、菊池さんとBirdの冨士枝さんだった。

まず、プラネット・テーブルから提供食材のリストがズラリと届く。

・トマト ・ミニトマト・ジャガイモS・シャドークイーン・ノーザンルビー・玉ねぎ ・さつまいも・ラディッシュ・人参・ビーツ・マッシュルーム・パプリカ・かぼちゃ・ルッコラ・わさび菜・赤からし菜 ・バジル・レタス・いちご・カシス・ブルーベリー・カシス・りんご・鹿モモ肉・豚肉

すると、その食材を見たBirdさんからすかさずメニュー提案が届く。

《ベース》

・Birdの卵タルタル・さつま芋とクリームチーズのサラダ・かぼちゃとドライイチジクのサラダ・シャドークイーンのアンチョビオリーブサラダ・ノーザンルビーのタラモサラダ・スタンダードなポテトサラダ

《デリ》

・キャロットラペ・バルサミコ風味のビーツラペ・ミニトマトのタコサルサ・パプリカのハニーマスタードマリネ

《生野菜》

・ラディッシュスライス・ルッコラ・わさび菜・赤からし菜

《肉》

・鹿肉のトマトラグー・豚肉ベーコン

《フルーツサンド》

・ヨーグルトクリーム・ミックスベリージャム・柑橘(みかんやポンカンなど)・りんごのコンポート(※りんごは煮崩れしやすかったために、ラグーの付け合せに変身しました)

《スープ・その他》

・マッシュルームのポタージュ・ピクルス

写真はオープン直前に撮影した、当日に提供された具材たちだ。来店されたお客さんたちは、並んだ具材を見ると口を揃えて「これがロス食材?」と呆然とし、一口食べて「すんごく美味しい。これがロス食材!」と絶句し、ハッと我に返って、自分の好きな具材をたっぷり詰め込んだサンドイッチを頰張りまくる。美味しいし、楽しいから、自然と初めて出会った人同士でも会話が生まれる。そして、閉店時間を待つまでもなく、あんなにたっぷり用意した具材たちはすっかり平らげられていた。つまり、お客さんたちが、楽しみながら美味しく食べてくれることがイコール畑のロスを減らしてもくれたわけだ。

美味しいとは、美しい味と書く。美味しいものが食べたいという僕たちの思いも、美味しい食材を育てたいという農家の思いも、美味しい食事を提供したいという料理人の思いも、根源は同じようなところにある気がする。それは、美しい味を求める心なのじゃないだろうか。あの晩、Birdには紛れもない美しい味が溢れていた。

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